煙草が短くなり、それを潰した時、曲はちょうど最後のサビの前の間奏に入っていた。


私は圭介の方を小さく睨み口の動きだけで「意地悪。」と言った。


圭介は何故か優しく微笑み、私の手を優しく握った。


直接伝わる手の温もり。


それもまた、私の中の純との思い出を忘れさせてくれるようだった。


『俺はここにいるよ』


そんな風にさえ思えた。


いつか、圭介に好きな人ができて、その人が彼女になったら圭介だって居なくなるくせに。


だけど、そんなこと考えていたらキリがない。


今はそんなこと考えるのは止めよう。


今はどっぷりと錯覚に陥るのもいいのかもしれない。