君の隣で夢みた未来

「おはよう」



先輩はあたしたちにそう言ってクシャッと笑った。


昨日の放課後までは見てるだけだったのに、今、その人があたしに声をかけてくれている。



「なかなか気付いて貰えなくて心、折れるかと思ったよ」



彼はそう言って少しだけ困ったような表情を浮かべていた。



「…まさか、呼ばれてるとは思わなくて」


「先輩、実子の事『ちびちゃん』って…」


「あー、昨日の美咲さんの紹介が雑すぎて、名前聞き取れなかったんだ」



話を聞くと、名前はわからないけど顔は覚えていたから声をかけたらしい。


気付かないままだったら声はかけなかったという。



「ごめんね。もう1回聞いてもいい?名前」



彼は申し訳なさそうにあたしたちに尋ねた。


昨日よりは緊張していないけど、周りの同じ制服を着ている人たちの視線が少しだけ痛い。



「実子です」



と言って、あたしはそれらの視線に勝てなくて思わず俯いてしまった。


花月は舞い上がって気付いてないかもしれないけど、目の前に居る人は学校のアイドルの様な人なんだ。


憧れている人は数え切れないくらい。


1年のあたしたちが気軽に接しちゃいけないように思えた。


先輩はそんなの気にも留めずに「実子ちゃんね」と繰り返していた。



「でも、『ちびちゃん』って言うのも実子っぽくてありかもしれない」



花月がケタケタと笑う。


それに対して先輩も再び顔をクシャッとして笑った。