「どうした?愛染…憂いた面だな…何かあったのか?」



三郎さんは優しい眼差しでわっちを見つめる。



視線を絡めるだけで、私の身体は三郎さんを求めて疼いていく。



-----早く私を求めて…



「…三郎さんの気のせいでありんす」



私は紅で彩った口許に笑みを湛える。



手に持った徳利を傾けて猪口に注ぐ。


わっちは空になった猪口に、お酌をする。


三郎さんは角型の行灯の柔らかい火を猪口に注がれた酒の表面に映しこむ。



「・・・」



わっちと三郎さんは花魁と客の関係。



わっちも揺らめく行灯の仄かな火を虚ろに見つめた。