「!!?」



ショーウィンドの割れたガラスの破片を握り締めながら、男は這い出してきた。




「…くそっ」


驚くコトに男の双眼には黒目がない。白目を剥き、服はあちこち破れ、血が固まっている。間抜けに開いた口許の端からは血の混じった涎を垂れ流していた。麻薬常習者の末期症状みたいだった。




ケルブは鞘から大きな長剣を抜刀した。



彼の持つ剣の刃は炎のように燃えてきた。剣先を舗道に突き刺し、詠唱を唱え始める。

この炎は冥府神様の魔の力の象徴。


ケルブの立ち位置を中心として、大きな円が現れた。




紅色の魔法陣…




見たコトのない文字や絵の羅列だけど。これは攻撃の陣形だ。



魔法陣から激しい紅蓮の火が上がる。その火が狂った男の身体を焼き尽くし、一瞬にして灰にした。