そんな忙しいバイトでも、一日だけずっとお客さんが入らない時があった。

その日は、ベテランのおばちゃんや学生の人たちは先に上がって、私と砕花だけになった。

「留子亜ー。暇だしご飯でも食べる?」

そう砕花が言った。
私はそんなにお腹がすいてなかったから首を横に振った。

「プリンだけでも食べなよ」

砕花が手作りプリンにスプーンをさして渡してくれた。

「ありがとう」

それだけ言って、もし、お客さんがきても見えない死角の場所でプリンを食べていた。

「美味しい?」

砕花が嬉しそうに聞く。
私も笑顔を作って頷いた。

「すっごく美味しいよ。さすが、砕花。だてにパティシエ目指してないね」

バイト先でこんなに話したのは初めてだった。
すごく楽しくて時間がすぎて行くのも分からないほどに。
でも、嵐がきたんだよね。