「起こしたくない?」


『奇跡?』


「奇跡。」



『…うん。』


「起こそうよ。」


『…今?』

「徐々に!その奇跡起こすの俺の役目ね!」


『あはは。徐々にね!』



前川はさっきよりずっと大人っぽい笑顔を見せてくれた。


「お前一生笑わないのかと思った。」


『笑うよ。ふふっ』



「可愛いじゃん。」




トンッとシャーペンを置いたプリントには

かなり分かりやすい途中式が書かれていた。


プロなんだな。って

バイトの前川に本気で感じてた。


かっこいいじゃん


その言葉は心の中だけで
呟く。


勉強するのは

ちょっと楽しいのかもな。