愛、桜

「ベンチに座ろ」
促してはみたが、とてもベンチまで歩けるようには見えなかった。
「うん、わかったなり」
後ろにあるベンチに向かおうと体を反転させようとしたところで、足がもつれ倒れた。
顔が真っ白だ。さっきよりも年齢はあがっている。いったいどうなっていると言うのだ。
「きゅ、救急車・・・」
バッグから携帯を取り出そうと探すが見つからない。どこかで落としてしまったのだろうか。何度も見てみるが見当たらない。
母親はどうすればいいのか、混乱し過ぎていた。出来るのはヒステリックに叫ぶ事だけ、それだけだった。
「誰か、誰か助けて!」
静かな公園で叫べば、かなり遠くまで届く。それが見える範囲にいるのなら尚更で、優とみなみにも届いた。
「なんだろ?今の?」
ヒステリックな叫びではあるが、聞き覚えのある声に思えた。だから優はすぐに反応した。
みなみも反応はしていた。けれども、優とどうにかなりたいと言う気持ちの方が圧倒的で、優ほどあからさまに反応はしていなかった。そんな気持ちであったから、問いかけにもすぐには答えなかった。
「・・・」
「い、行こう!行かなきゃ!」
「えっ、待って」
優は立ち上がり、脇目も振らず声がした方に走り出した。