愛、桜

「設定温度下げた方がよろしいですか?」
やや麻友を覗き込むような感じで聞いた。
「あ、大丈夫ですよ。すぐに落ち着きますから」
笑いながら、母親が店員に返した。
「そうですか。なら、良かった。どうしても花が一番いい感じに咲くようにと、人より花を優先してしまっているものですから。何かあればすぐに言って下さいね」
「ありがとうございます。それより本当においしそう」
テーブルに置かれた料理を見て、二人は目を合わせ笑いあった。
「どうぞ、ごゆっくり」
店員は会釈をした。
「それで・・・優の事は本当になんとも思ってないの?」
店員がいなくなったのを見計らって、料理にナイフをあてながら母親は聞いた。
しかし、麻友はこの話がまだ続くとは思っていなかったから、料理を口いっぱいにほおばっており、母親のそれを聞くなりむせ込んだ。
「ごほ、ごほ・・・」
「だ、大丈夫?」
「ごほ・・・。大丈夫じゃないなりよ。まだその話続くなりか?」
「続くも何も、途中だったじゃない」
「途中でも別にいいなり。忘れておいてほしかったなり」
「本当に?お母さん、優を彼氏にするにはどうしたらいいの?とか聞きたいんじゃないの?」
「なんで、そうなるなりか?」
「だって、お母さんモテたから」
臆面もなく言った。