愛、桜

店員は笑った。ごく普通に。二人はそれをそのまま受け取った。少しでも違和感を感じていたのなら、麻友が自分でメニューを選んでいたのなら、何もやって来る事はなかったかも知れないのに。
「ところで・・・」
店員がいなくなると、母親が神妙な面もちで切り出した。
「な、なんなりか?」
当然麻友は構えた。
「・・・」
わざとなのか、母親は間をおいた。
「な、なんなりよぉ」
緊張に押しつぶされそうだ。
「ふふふ。優とはどうなのよ?」
「えっ?!」
もっと別の事を聞かれると構えていただけに、この質問には完全に虚を突かれた格好となり、おおよそ女子高生とは思えない百年の恋も冷めてしまうような間抜けな顔をした。
それを見て、母親はすべてを悟ってしまった。
「あぁ、いい。答えなくて。その顔見たら、優だって麻友にはときめかないわ・・・」
「な、何を言ってるなりか!」
動揺が全身に巡っており、否定すればするほど墓穴を掘っている。顔は紅潮し、耳まで真っ赤だ。喉も渇いてしまったのだろう。声は裏帰り、耳障りな高温となって店内に響いた。
「何って、麻友も高校生になったわけだし、そろそろ優となんか進展あったかなって思っただけよ」
「進展なんて・・・。そもそも優の事なんて何も思ってないなりよ」
「ふぅん。じゃ、なんでそんなに顔が真っ赤なのよ?」
「こ、これは・・・この店の中が暑くてしょうがないからなり!」
そこに料理を持って店員が現れた。