愛、桜

レトロな花が一面に咲き誇っているレストラン。桜はもう時期じゃないから葉ばかりになってしまっているけれども、それ以外の花々は美しさを競い合っている。
「なんかすごいなり!」
「でしょ?この間、取材で来て麻友を連れて来たいなって思ってたのよ。気に入った?」
「気に入ったなりよ!」
母親は笑った。
「じゃ、入ろうか?夕食の時間にはまだ少し早いから、きっと空いているはずだよ」
母親の言った通り、店内には一組しか客はいなかった。初老の夫婦だった。
「いらっしゃいませ。何名様でしょうか?」
「二人なんですけど、大丈夫ですか?」
どう考えても大丈夫なのだが、つい取材をする時の低姿勢な言葉遣いが出てしまっていた。
「はい。もちろん。こちらへどうぞ」
店員は母親の言葉を気にする事なく、淡々と店の奥へと案内した。席へ続く通路にも花がたくさん飾られている。麻友の瞳には、赤、黄、白、紫、様々な色が写り、猫の目のように色を変えていった。
「きれいね・・・」
母親も同じように奪われていた。
席は店の奥の角の席だった。電車の席などでもそうだが、人間は不思議と角を好む。空いているせいもあるが、この席を案内されると何か得した気がした。
「こちらへどうぞ」
「ありがとう」
感謝を表し、それから席についた。
「こちらがメニューになります。どうぞご覧下さい。今、お冷やをお持ちいたします」
店員が消えていくと同時に、二人はメニューを開いた。
「どれにする?」
母親は聞いた。