テンションはこの青い空を突き抜け、太陽にまで届かん勢いだ。
「駿もこっちおいでよ!」
言われるがままに向かった。同じように小走りだ。駿も美玲ほどではないが、テンションはあがっている。
「すげぇー。すげぇよ」
祭壇を一段あがっただけなのに、景色は一変した。一面に広がる海の先には何もなく、水平線が一直線に引かれている。目を凝らせば、小さく船らしき影が見えるが、ほとんど気にならないから、色違いの青のコントラストが目の前にあるだけだ。
そんな二人を見て、式場のスタッフの女は、まるで獲物をしとめたかのような表情を浮かべた。
「では、こちらで詳しく説明させていただきますね」
二人が落ち着いた頃合いを見計らって声を掛けると、それがさも当然かのように駿と美玲は手をつなぎ、スタッフの後ろをついていった。
式場の中に入ると、さっきまでの太陽の眩しさも手伝って、とても薄暗く見えた。
「こちら段差になってますので、お気をつけ下さい」
テラスから五十メートルほど入ったところが、階段一段ほどの段差になっており、その少し手前でスタッフは言った。ここまで来ても、二人はまだ目が慣れてなかった。瞼を閉じれば、鮮やかな青のコントラストが浮かぶように、視界はテラスに置いてきたままだ。だから一言言われなければ、確実に転んでいた。
「なんで、こんなところに段差があるんだろ?」
駿は一言を言った。が、その理由はすぐにわかった。
「こちらにお座りいただきお待ち下さい」
二人はちょうどテラス側を向いて腰掛けた。ここで理解した。ちょうど座った二人の視線が、海以外の何ものも入らない状態になった。一段上がる事によって、この巧みな演出が完成されるのだ。ちょうど壁側に当たる奥に美玲、通路側に駿が座る。
少しすると、さっきのスタッフとは別のスタッフが、コーヒーとおしぼりを持ってやってきた。