レベル・ラヴ

 ふと、何かの気配に気づいたように顔を上げたエルシルド様と視線が合った。
 視線が合ったことに驚いて急いで見えない場所に引っ込む。

 心臓がすごい勢いで鼓動している。
 まさか、顔を上げるとは思わなかったので、安心して見ていた。

 エルシルド様がいくら血統重視の蒼の騎士団に所属しているとはいえ、あの若さで副団長の位置まで昇り詰めた人なのだ。
 騎士として、かなりの腕を持っていなければ副団長にはなれない。
 そんな人だから気配には敏感なのだろう。
 気づかれるのは当然だったかもしれない。

 エルシルド様は一見穏やかで優しげに見えて、剣の実力はすごい。
 剣大会でも優勝したことがあるほどの腕前だ。
 そんなエルシルド様が怪我なんて・・・と、考えて、今日は蒼と緋の合同練習だったことを思い出す。

 エルシルド様の腕前に匹敵する相手は限られている。
 蒼の団長、緋の団長、副団長・・・そして、緋の騎士団で次期副団長になると言われているゲシュト様だ。

 ゲシュト様とエルシルド様の腕前は拮抗していると聞いたことがある。
 年齢も近く、仲もいいと聞いた。
 今日の練習でも一緒に練習したのかもしれない。

 でもなぜ医務室に行かず、こんな時間、こんなところで傷を洗っているのだろうか?

 不思議に思っていると、自分が呼ばれていることに気づいた。
 連呼されていた「君」って呼称から、呼ばれているのは私ではないかととも思ったが、はっきりと「エレーナ」と呼ばれてまた下を覗き込む。
 エルシルド様に自分の名前を呼ばれたことに驚く。

 助けてもらった時に自分の名前を名乗ったが、まさか覚えていたとは思わなかったのだ。

 下を覗き込むと、エルシルド様がこちらに顔を向けていた。

「エレーナ?」
「はい・・・」

 私が返事をするとエルシルド様は少しだけ困ったように、躊躇った後、手に持っていた白い物を私に見せる。

「その・・・上からこれが流れてきたのだが・・・」

 薄暗くてわかりずらいが、白くて小さな布を持っているようだ。
 そこまで考えた時、私は心臓が止まるかと思った。

 慌ててそこから離れ、近くに置いてある籠から目的の物を確認して一気に肩の力が抜けた。
 自分の下着をエルシルド様に拾われるなどぞっとしてしまう。