レベル・ラヴ

 ふと、目を覚ましたことで自分が眠っていたことに気づいた。
 空を見上げれば、夜空には星が瞬いている。

 少しだけぼうっとする意識から、自分がのぼせている事に気づき、浴槽からゆっくりと出た。
 すっかり温まった体を外側の浴槽からあふれたお湯が浅瀬に流れる場所に座る。
 下の水溜りを求めて来る騎士を見下ろす為、普段はみんなここでくつろいでいた。

 こんな時間なのでもう騎士は通らない。
 私は安心して座ることが出来た。

 けれど、下から水音がすることに気づく。

 今の時間は窓越しにメスと会話を楽しみに来たオスが来ている時間だ。
 オスの誰かが水を使いに来たのだろうか?

 私は気になってそっと下を覗くことにした。

 ゆっくしと下を見下ろしたとたん、驚いて少しだけ水音をたててしまったのだが、この先は滝のようにお湯が下の水溜めに落ちているのでその音にかき消されてくれたらしく、下にいた人物は顔を上げることはなかった。

 銀の鎧に蒼いマント。
 腕には蒼い腕章がついている。

 銀の鎧は聖騎士である証。
 蒼いマントは蒼の騎士団に所属しているということ。
 そして、腕の腕章は団長か副団長しかつけてないものだった。

 そんな装備を付けているのはこの国でたった2人。
 でも、私には装備なんてわからなくてもわかる。

 私が想う人は1人だけ・・・。
 今、下にいるのはエルシルド様だった・・・。

 エルシルド様は腕に怪我をしたらしく、血のにじむ腕をゆすいでいた。
 腕に赤い線が15センチほど左腕についている。
 ざっくりとは切れていないようだが、痛々しい。

 手当てを申し出るべきか悩んでいたが、エルシルド様と関われば私の想いは深くなり、この気持ちがますます苦しいものになることはわかっていた。
 そのせいで、私はエルシルド様を音を立てないように注意しながら見下ろすことしか出来ない。

 エルシルド様ほどの人となれば、窓から転落し、助けたメイドのことなど覚えていないだろう。
 だから、いつも一方的に見ているだけだ。
 見ているだけでは満足できないのに、見ていることしか出来ない。
 私にとって、エルシルド様は遠すぎる存在なのだ。
 王に恋をしてるのとなんら変わらない。

 私は腕にアゴを乗せて、傷口を丁寧に洗うエルシルド様を見ていた。