公衆の面前であろうとも、この想いは誰に恥じることはない。
 オレは一呼吸して口を開いた。

「私の妻になってくれ!」

 はっきりとした求愛に、エレーナの両目が大きく見開かれる。
 確かに血統や身分を考えれば妻に求める相手ではない。
 しかし、オレは彼女だけを愛しているのだ。

 落ちてきたあの瞬間から!

「色々な障害があるのはわかっている。しかし、君を初めて見た時から君しか愛せなくなっているんだ! 悲しませたり苦しめたりするかもしれない。だが、一生君に尽くし君しか愛さないと誓う! だからどうか私の胸に飛び込んで来てくれ! 君と初めて会った時のように!」

 自分の気持ちを正直に向けると、エレーナは泣きそうな顔をしてしまった。
 苦労させることはわかりきっている。
 それでもオレは他に選べないのだ。

 エレーナは横にた友人に何か話しかけられ、何かを言っていた。
 周りにいた人間もいっせいに何か言っているようだ。

 オレの応援をしてくれての言葉ならいいのだが・・・。
 彼女だけは傷つけたくはない。

 エレーナは友人の言葉に頷くといきなり窓に足をかけた。
 もしかして、そこから飛び降りる気では?

 怪我でもさせては大変だと、慌ててしまう。

 少しの衝撃があり、オレは飛び降りてきたエレーナをしっかりと抱きとめていた。

 最初に出会ったのは、自分の腕の中に落ちてきたエレーナ。
 彼女は落ちてくる運命なのかもしれない。

「気持ちは決まったのですね」

 同じように受け止めようと待機していたガーディアンがエレーナに話しかけてきた。

「はい!」

 ガーディアンに振り向き、返事をするエレーナの表情はあいにく見ることが出来なかったが、返事をする声は明るく迷いのないものだった。
 そんなエレーナにガーディアンが初めて笑う。

 もしかして2人は親しい仲なのかもしれない。
 2人の間に気安い雰囲気が流れている。

「貴女の幸せをみんなで祈ってますよ」
「マリアさん、ありがとう・・・」

 彼女がお礼を言ってからオレはそこから彼女を連れ去った。
 正真正銘の妻とする為に・・・・・・。