朝、目が覚めると、時間はまだ早いようで、夜が明けたくらいの時間だった。
 隣には覚悟していた通り、誰もいない。

 そっとシーツに手を伸ばすと、少しだけぬくもりが残っていた。
 引き裂かれるような胸の痛みに自然と涙がこぼれる。

 私はきしむ体を奮い立たせ、ベッドの横の椅子の背に掛けられていた自分の服に着替えると、エルシルド様の部屋から出た。
 情事の相手がいつまでも部屋にいたらエルシルド様は部屋に戻りずらいだろう。

 エルシルド様は一生を捧げるにふさわしい方だった。
 2度目の情事は労りと優しさで満たされていた。
 私が泣いて止めるまで喜ばせてくれたし、交わる快楽を覚えるまで体を重ねた。

 おかげであっちこっち痛むけれど、これもいずれはいい思い出になるだろう。

 寮に戻ると、ガーディアンが心配したような表情で近づいてきた。

「エレーナ、もしや?」
「いいえ、違います。マリアさん、心配させてごめんなさい」

 私の浮かべた笑顔に少しだけ安心したようだが、服の隙間から見える情事の跡に気づいて表情を険しくした。

「貴女にはまだ春がきてなかったはず」
「ええ、でも相手には春がきていたんです」
「つがいとなったのですか?」

 一番聞かれたくなかった質問に、涙がこぼれた。

「私が望んだことなんです。・・・あの方がつがいを選ぶ前に・・・一度だけでも・・・」
「・・・そうですか」

 私のようなメスは何人かいたという話は私も聞いている。
 彼女はガーディアンなのだ、私よりも色んな話をきいているのだろう。

 彼女はいたわるように私の背中をさすってくれた後、私を気遣って部屋まで送ってくれた。