放課後。

HRの後早々に帰る準備をした僕は、真っ直ぐに屋上へと向かった。

彼女がいるかもしれないという思いよりはむしろ、それが当たり前にになっていたからだ。
……そこにほんの少しの期待があったことは否定しないが。


ギィ、と重いドアを開ける。

照りつける日差しが眩しくて焼けるように暑かったけれど、吹く風は涼しくて心地良くもあった。


いつもの定位置に、目に入った後ろ姿。
それは紛れもなく彼女だった。

一歩歩み寄る。


ーーきっと、耳に届いているであろう噂を彼女はどう感じたのか。



「……椿さん」



声をかけると彼女はすぐに此方を向いた。



「右京君」