「理由を……聞いても良い?」

「ごめんなさい」



気持ちには応えられないというのと、理由は答えられない。
彼女の謝罪には二つの意味が込められていた。

ーーそれが、今の彼女の思いを表しているのだと思った。



「…………そっか」



たっぷりの間をおいて出たのはたった一言。

彼女の腕をそっと離した。



「送ってくれてありがとう」



僕の返事も聞かず、彼女はアパートに向かって歩き出す。