階段を下りてキッチンに向かう。

途中通るリビングには、四歳の妹・美都(ミト)が一人で遊んでいた。



「お兄ちゃん!いっしょにお絵かきしようっ」



美都はおそらく僕であろう、お世辞にも上手いとは言えない絵(泣かれると困るので、上手いって言ってやるけれど)を満面の笑みで僕に見せた。


リビングのテレビが、誰も見ていないのに空しく光と音を放つ。

甲子園の地方大会のニュースをやっていたらしい。



「……友だち来てるからまた後で。母さんは?」

「おとなりさん行ってくるって言ってた!」



美都の話を聞きながらキッチンの冷蔵庫を開けた。
麦茶を取り出してコップに注ぐ。