その時、ホームに列車が止まった。

たくさんの人が降りてきたけれど、乗る人は彼女含め数人しかいない。



「椿さん」



彼以上に、なんて言わないよ。


僕は少しでも彼女の心に残ることができただろうか。



「さよならは言わない……また、いつか」

「……ええ、またね」



ーーたった数ヵ月。

今まで平凡な毎日を過ごしてきた僕にとって、彼女との時間はとても穏やかでそれでいて刺激的でもあった。


例えるならば、夏の太陽に向かって咲く向日葵のように。

最後まで綺麗だった彼女の笑顔を、僕に見せてくれた本当の彼女を、きっとずっと忘れない。


彼女の笑顔が好きだ。

彼女が、好きだ。


想いは届かなかったけれど、それで良い。


先の分からない未来、彼女にたくさんの今みたいな笑顔が溢れますように……僕は願う。





END