「あんなに知りたかった暁の気持ちは、すぐ近くにいつもあったのに……私は気づけなかった。右京君がいなければきっと、これからも知らないままだったわ」



ホームにはアナウンスやたくさんの足音や声が響く。


それでも、透き通るような彼女の言葉は何にも邪魔されることなく、僕に届いた。

それはとても心地が良くて。



「……初めてだった。暁以外にこんなにも自分を見せたの」



今までの人生、十七年間で大した経験をしてきたわけではないけれど。



「それは……凄く嬉しいよ」



あの日屋上に行かなければ。
彼女が泣いていなかったら。

こんなにも悲しくて切なくて、痛いくらいの。


ーー同時にとてつもなく愛しい思いはしなかっただろう。



「あの時屋上で会ったのが右京君で良かった」