「昨日は絵描いた?」
「……きのうはルカちゃんとあそんだもん」
ルカちゃんというのは人形のこと。
お絵かきにルカちゃん人形ーー一人遊びばっかりだと思ったけれど、そういえば昨日は病院に行くからと言って美都は保育園を休んで家にいたことを思い出した。
「父さんに言えば新しいの買ってくれるよ」
四年前、父さんが五十歳間近で産まれた美都は、父さんにとって待望の女の子だった。
おかげで美都への溺愛っぷりは半端でなく、美都がひとたび泣きつけばスケッチブックくらい十冊でも二十冊でも買うだろう。
ところが美都は、今度は大粒の涙をポロポロと流しだした。

