「……引っ越しはいつ?」

「土曜日、かな」

「そんな急に……」

「うん、だからもう学校にも行かずに荷物整理しなくちゃいけないの」

「終業式は三日後だけど?」

「それも出ない。先生にも話をしたし」



淡々と進む会話に真実味は感じられなかったけれど、彼女が転校するという事実だけは何とか把握した。



「……誰にも言わないまま行くの?」

「そのつもり」

「っ……どうして」

「私は、結局逃げるの」



その言葉を残して彼女は足早にドアを開けて帰って行った。

まるで、その後の僕の言葉なんか聞きたくないとでも言うように。