「県外の高校にね」



彼女がいなくなるーー?


風が一瞬、止んだ。

時が止まるような、そんな感覚すらしてしまった。



「……彼のことが噂になったから?」



そうだ。
前の学校でもそういうのが耐えられなくて、と言っていた。

彼を知らないはずのこの学校に転校してきたのに、結局広まって。

彼女にとっては二度目の耐えられない状況だろう。


そう思ったけれど彼女は首を横に振って、どうやら僕の考えは違ったらしい。



「今度は親の仕事の都合。この高校に転校させてくれて一人暮らしもさせてもらったから、やっぱり一緒に住もうって親に言われたら、もっとここにいたいなんて我儘言えなかった」



まさかこんなタイミングで暁のことが皆に知られるとは思ってもみなかったけどね、と彼女は言った。