ーーそれだけじゃない。
そんな光景を何度か目にする内に、気づいたこと。
彼女が泣いている時は、決まって今日のように野球部の掛け声がしていたんだ。
彼女の話を聞いた今では、なんとなく理由がわかった気がする。
泣かない、泣けないと思っていても、同じように野球をやっていた彼に対する、自分の非だと思っていることを思い出してしまうのだろう。
彼の両親の前で泣けなかった彼女は、そうやって人知れず涙を流していたんだと思う。
……僕が知ってしまったけれど。
「椿さんは、彼のことが本当に好きだったんだね」
素直な感想だった。
彼がいたらきっと誰も、ましてや僕なんか、簡単に入り込めないくらい強くお互いを想いあっている関係。

