緑の濃いけわしい山道をハバキとクラトが先頭に立って馬をあやつって器用に渡ってゆく。馬になれていない姫夜の乗る馬はカリハが手綱をとっていた。
 モモソヒメによって土地神が穢された村を、姫夜は見たことがある。その村には黒い雨が降り、草木も作物も枯れ果てた。蟹のように手の指が二本しかない赤子が生まれ、ハヤリ病で人がばたばたと死んでいった。
 姫夜は馬上でそっと身を震わせた。