「――どうどう、静かにしろ」

 その朝、まだ夜も明けきらぬころ、姫夜はけたたましい蹄の音と、馬のいななきに浅い眠りを破られた。何事かと板戸を開いてみると、まだうすぐらい庭に、白馬を連れたハバキが立っていた。ハバキは姫夜を見ると、笑顔を見せた。

「目覚めたか。これからカツラギを案内する。これはそなたの馬だ」

「わたしの?」

 姫夜は裸足のまま、とんと庭に飛び降りた。