禍津姫戦記

「無闇に怖れずに心を鎮めてかかるのが肝要です。まじないとはそうした心の揺れに付けこむもの。とにかく心を乱さぬことです」

 那智が噛んで含めるように云った。

「そうだ。予測はできないが、われらにはカツラギの神の守護がある。それを信じて戦うしかない」

 満月の夜を越えて、無事に朝を迎えることが出来さえすれば――。
 姫夜は星で埋め尽くされた空を見上げた。今宵の空には下弦の月がかかるだろう。