禍津姫戦記

 ややあって、しもべ二人に支えられるようにして壮年の男が入ってきた。足もとは覚束ないようだったが、鋭い目つきと頑健なあごの線がハバキによく似ている。

「おお、イスルギさま」

 酔って真っ赤な顔をした男たちが慌てて次々とはいつくばった。ハバキは立ち上がって、自分が座っていた円座をゆずった。

「あのものがそうか」

 イスルギはするどいまなざしを姫夜にむけたまま、短くたずねた。

「そうだ」

 ハバキは答えた。