禍津姫戦記

 商人といっても商人の態をよそおった、いわば間諜である。那智は兵士の動き、ものの動き、国々の政のようすを整理して事細かに報告した上で、最後にこう締めくくった。

「モモソヒメは筑紫の地にあって、着々と女王としての地位をかためているとのこと。オオミタカラのその呪詛と鬼道の力をおそれることははなはだしく、種まき、取り入れの時期、まつりごとのすべてを託宣によっているそうにございます」