言下にハバキはこぶしを姫夜のみぞおちにあてた。むろん相当にかるく加減はしたのであったが、姫夜は声もなくくずおれた。長い黒髪が乱れて扇のように広がった。

「……」

 ハバキはしばし、そのほっそりした裸身を、切なさと戸惑いと憤りの綯いませになった表情で見つめていた。
 やがて、ためいきをもらし、上に衣を着せかけてやった。

「そういうことは白面(しらふ)のときに云うものだ」