禍津姫戦記

「どうして?」

「俺はアゲハの思い人が誰だか知っているからだ」

 というのがハバキの答えだった。ハバキは杯を差し出した。

「飲もう。今宵は断らせぬぞ」

 姫夜はハッとしたように目を上げた。
 ハバキの後ろの空に、美しい冴え冴えとした細い月がかかっている。