禍津姫戦記

「そうか。クラトがさっそく噂を広めておいてくれたようだな」
 
 ハバキは満足げにうなづいた。

「まずは酒だ」

 ハバキは姫夜に瑠璃の杯をさしだした。どの国でも酒をくみかわすことは固めの意味を持つ。それはワザヲギの民でも同じだった。
 姫夜は黙って、どうしていいかわからぬように、杯をみつめた。姫夜のなかでは今日一日に降りかかってきたことが、まだぐるぐると嵐のように渦巻いていた。