禍津姫戦記

 武人ではあるが、堂々とした身のこなしには生まれついて支配者として育てられてきたものの風格がそなわっている。意志の強そうなまっすぐな眉に、頬のそげた精悍な顔立ちだが、白い歯をみせて笑うと、悪童めいて見えた。

「那智。いつも草花か病人ばかり相手しているそなたが出てくるとは、珍しいな」

 大きな声で問いながら、ハバキはどかりと毛皮の上に腰をおろした。
 那智はにっこりした。

 「はい。手当も一段落いたしましたので、ハバキさまを嘉してくださったお方にお目に掛かりたく、出て参りました」