禍津姫戦記

 布目の粗い着物をきた女たちが、男たちに尻を撫でられても笑って肩をこづき返しているのを、姫夜はびっくりしたように眺めていた。
 女たちをからかいながら盛大に飲み食いする男たちは、十五くらいの若者から三十ぐらいまでの働き盛りが多い。

「あなたですね、ハバキさまを嘉してくださったというのは」

 武人の宴には場違いなやわらかい声がした。
 浅葱色の長衣をまとい、まっすぐな銀髪をゆるやかにひとつに編んで片方に垂らした、たおやかな男が立っていた。
 歳の頃は三十、あるいはもっと若くも、上のようにも見える。