禍津姫戦記

 姫夜は磐座の石を枕にしたまま、血の気の失せたくちびるでこたえた。ワザヲギの民に生まれたとはいえ、それは初めての体験だった。四肢が千の破片に砕け、またつなぎあわされたようで、頭の芯は強烈な酒をしたたかにくらったようにとろけていた。姫夜はふたたび、今見た幻のなかに引き込まれてゆきたいかのように、うっとりとまぶたを閉じた。
 ハバキははっとし、姫夜の腕をつかんだ。