禍津姫戦記

 そして二人の両側には見渡すかぎり、槍や矛をたずさえた兵と、色も形もさまざまな兜をつけた騎馬の兵とが並んでいた。
 夢と呼ぶにはすべてがくっきりとして鮮やかすぎた。草の一本一本は翠玉のごとくきらめき、鎧の放つ光は目を焼いた。
 幻のなかのハバキが、するどい声でなにかいった。
 その指さした先に、二頭の馬がひく天蓋のない馬車に乗った、朱い鎧の女が立っている。