神を喚び降ろすには鈴、鏡、剣などヨリシロとなる神宝が必要だ。だがここは神域であり聖地である。占を行うにこれ以上ふさわしき場所はない。
 そう思えた。
 姫夜は思いきったように顔をあげ、はじめて言葉を発した。

「わたしは姫夜。そなたは名はなんという」

 男は先に名のった姫夜を驚いたように見た。

 そして、整ったおもてをひきしめ、右のこぶしを心の臓にあてて云った。

「俺はカツラギの将、ハバキ」