「われを呼んだはそなたか」

 みりみりと、岩が鳴った。
 どろり、と岩の割れ目から黒い影がしみだした。姫夜がみつめていると、それはみるみる大きくなり、翼をもち、体は蛇の鱗におおわれた、異形の姿に変わった。異形の神は赤い燃えるような眼で姫夜をにらみつけ、翡翠色の翼を広げた。
 姫夜は恐れげもなく、異形のものをまっすぐに見あげた。