「美月、お祭り行くの?」
お母さんが、浴衣を手に持ちながら聞いてきた。
「奈穂と行くけど…浴衣着てけと?」
「うん、可愛いでしょ?」
そう言ったお母さんが持っていたのは…白にピンクの花柄の浴衣。
「私、黒とか紺がいいなぁ。」
「え~、何で!? 可愛いのに…。」
可愛いのは私に似合わない。
「似合わないし…ねっ?」
「似合うよ! うちが選んだんだし!」
その後も一歩も譲らないお母さんに、私は折れてあげた。
ってか、折れた。
だって、お母さんズルいよ…。
「これ、海都も美月に似合うって言ってたんだから!」
「えっ、お父さんが?」
「そうよ! だからこれにしよ?」
「うっ…うん。」
私は頷いてしまった。