「あ、あんたがここに来ますようにって願ってた」
「なんでぇ?」
「つ、伝えたいことが、あ、あるから」
「急に改まっちゃって。何?」
たった二文字なのにうまく言えない
「す、す…」
「ちゃんと言えよ。何語だ?」
「日本語だよ!」
「分かってるよ、何?」
「…」
川の流れる音だけが響く
「すき」
「…うん。…へ?」
星夜は驚いて夏芽を見た
再度、確かめるために星夜は聞いた
「…もっかい言って?」
「言わないよ」
「よく聞こえなかった」
「嘘つけ!」
「本当!聞こえなかった!」
「…」
夏芽はためらいながら
「すきだよ。いつの間にか星夜のことすきになって…」
夏芽の言葉を待たずに星夜は夏芽を抱きしめた
「ちょっ…」
「俺も好きだ。夏芽が好きだ」
夏芽は抱きしめ返せないはずなのに
少し広い背中に触れられた気がした
星の輝く夜空の下で
二人の愛が芽吹いた

