「そろそろ話せる?」


二人は木の枝に止まり体を休めた


「うん」


星夜は朱子が話すのをゆっくり待った


「…あたしさ、みんなに隠してる事があったの」

「うん」

「意味もなく地上にいて遊んでるなんて嘘」

「うん」

「地上にどんな未練があるの?って聞かれたくなかったの」

「うん」

「でも、未練はなくなった。だから成仏出来るはずなのに…」

「また、新しい未練が生まれてしまった」


朱子は星夜を見た
言いたいことに気づいてくれたから驚いたのだった


「…どうしたらいいか、わかんないよ」


また朱子の目から涙が溢れだした


「どうして大切なものはいつもそばにないの?どうして遠ざけようとするの?どうして…」


涙が止まらなくなる朱子に星夜は触れようとしたが触れることが出来なかった
それがなぜだか分からない
近づけた手を離した
雨が止んで遠くの空が少しだけ晴れた
差し込む光
それは優しい光だった


「朱子ちゃんの未練、ちゃんと話すべきだと思う」


朱子は首を横に振った


「話さなきゃ、何も始まらないと思う。何も進まないと思う」

「…嫌だよ。あたしだけの大切な思い出だもん。あたしの中だけにあればいい」


何も変えようとしない朱子に星夜はため息をついた
どんな言葉を伝えたらいいか悩んだ
思い浮かぶのは夏芽だった


「あいつが…あいつが言ってたんだ」

「…夏芽?」

「朱子ちゃんは親友だって…そう言ってあいつ…」

「……」

「笑ったんだ」


嘘だよと朱子は動揺した


「嘘じゃない。俺、こっそり学校覗いてたけど朱子ちゃんがいなくなってからあいつまた笑わなくなって…朱子ちゃんがいたからあいつは笑うんだって思った」

「やだ、そんなこと言わないでよ!!余計に地上(ココ)から離れられなくなる…」

「未練の原因があいつならあいつに全部伝えなきゃダメだ!!明日放課後、学校で待ってるから絶対来いよ!!」

「星夜くん!!」


星夜は遠くへ行ってしまった


「明日、日曜日だけど…」


星夜が日曜日、学校へ来てやっと気づいたのは言うまでもない