空に届くように


そんな調子で昼休み。

今日は愛実がいない。
先生に仕事を頼まれて、違うところでお昼を食べるみたい。

一人で教室にいるのもなんだな
と思って、内緒で屋上に行くことに。

ほんとは立ち入り禁止だけど。

鍵の開け方は知ってる。

半分だけ開く扉。

上手くあいだから手を入れてチェーンを外せば
ドアは開く。

「わー、眩し・・・」

冬の晴天は気持ちがいいなあ。

近くのフェンスのところに座って
売店で買ってきたパンの袋を開ける。

イチゴジャムと、マーガリンがいっぱいの
甘いパン。

それから、アイスミルクティー。

この組み合わせは最高。

幸せ。

一人でもくもくとパンを食べていると。

入口の向こう側の塀から制服がはみ出しているのが見えた。

──誰かいるの?

きっと塀に寄りかかっているんだろう。

気になって近づいてみる。

「・・・あのー」

返事がない。

「寝てるのかな?」

言いながらついに真横にきて、顔を覗き込む。

「あ・・・」

そこは、座り込んで気持ちよさそうに寝ている真田がいた。

「うそ」

誰もいない屋上に二人きり。

しかも寝てるし。

こげ茶色の髪。

そこまで長くもなくてさらさらしてる。

閉じている瞼には、長いまつげ。

「いいなー・・・」