「俺、こう見えてハートは繊細だから」

冗談ぽく言って、私の頭をくしゃっと撫でた。



「好きな子に気ぃ使われると凹む」


その言葉に、泣きそうになった。胸の奥がじんじんする。でもそれは、温かくて心地よい痛みで。



頭の天辺に手をのっけたまま、私の顔を覗き込むようにして、

「わかった?」

と、岩本さんは念を押すように言う。


甘い言葉を囁いておいて、そんな自覚まるでないみたいに涼しげな顔だ。



コクっと頷くだけで精一杯だった。



「行ってよし」

偉そうにそんなことを言って、私の頭の上からようやくその手を退けた。






岩本さんの車のテールランプが見えなくなるまで見送った。



明日のお昼は何して過ごすんですか? もっと早い時間から会いたいです。

遠慮するなって言われたけど、さすがにこれは言えなかった。



岩本さんの全部が欲しい……。

そんな風に思ってしまう私は、相当な欲張りだ。