恋に落ちた瞬間に失恋してしまった私は、『傷が浅いうちで良かった』と、もう自分で自分を慰めるしかなくて。


その甲斐あってか、ダメージも大したことなくて、懲りもせずポカンと彼の横顔に見とれていた。



不意に彼が再びこちらを向き、思わず身体が跳ねた。急に目の乾きを覚え、忘れていた瞬きをバチリとする。



「これ、A4にしたいんだけど、どうやんの?」

何事も無かったように聞かれ、さっきの刺々しい態度はもしや、気分を害したのではなく彼の素なのかな? と淡い期待を抱いてしまう。



やりますよ、と平静を装って伝え、倍率設定のボタンを押した。




「どうも」

コピーが終わると、今度はちゃんとお礼っぽい言葉を口にして、彼は事務所を後にした。