瞬きさえも忘れていた。

岩本さんが、じっと私を見詰める。

注がれる視線が、じりじりと焦げ付くように熱い。



束の間の沈黙。

その静けさに押し潰されてしまいそう。



けれどやがて、岩本さんの口が薄く開いた。

ほんの少し間を置いてそこから漏れ出たのは、とても穏やかで優しい声だった。


「だけど鳴瀬さん……。

帰ろうとしてたんじゃないの?」



はぐらかそうって魂胆が見え見えのその言葉に、思わず躍起になって言い返した。


「違います! そうですけど……帰ろうとしてましたけど、でも違います!」



岩本さんは不思議そうに小首を傾げた。


この人の、こんな何気ない仕草も大好きだ。



「帰りたくないっていうのは、そうじゃなくて。もっと……もう少しだけ、岩本さんと一緒にいたいって……だから……」


ポロン、ポロン、と小さな粒が、いくつもいくつも両の頬を伝って落ちた。

どうしちゃったんだろう、私。