岩本さんの動きが余りに自然で、違和感なんか全く感じないけれど、よくよく考えてみたら、恋人同士でもない男女が手を繋ぐって、やっぱりおかしい。



そんなことを思ったら急に恥ずかしくなった。

だけどもこの温かな手を振りほどくなんて出来なくて。むしろそんなこと、絶対にしたくない。



一時の幸せに胸が高鳴る。それをどうしても手放したくない私は、ただ導かれるまま彼について行く。


火照った顔がすごく重く感じて、耐え切れずに俯いた。



岩本さんが立ち止まったので、私も足を止めてようやく視線を上げた。



外灯に照らされていても仄暗い駐車場に、何台も車が停まっている。そのうちの一台、黒っぽい色のハッチバックの真ん前に私たちは立っていた。



チャリッと小さな金属音を鳴らして、岩本さんはジーンズのサイドポケットから鍵を取り出し、キーレスエントリーのボタンを押した。


ガチャッ――

車のロックが解除された音が、暗闇の中でやけに響く。