瞬きさえも忘れていた。



コンビニ前にとめてあった岩本さんの愛車を見て、唖然とした。



「『送る』って、これで? 家に着く頃には陽が昇ってます」



それは極普通の、何の変哲もない赤い自転車。



「明日は雨だけど?」

岩本さんは、また捻くれたことを言って、意地悪く目を細めた。


「朝になるって意味です。わかってるくせに」

すかさずそう、言い返した。



岩本さんとのやり取りに、段々と慣れてきている自分に気付く。


コツを掴めば、不快じゃない。

むしろ楽しかったりする。



ふわり、長い右足を軽やかに持ち上げて自転車に跨った岩本さん。


「乗って。家まで戻れば車あるから」

そう言って、穏やかに微笑んだ。



それでも躊躇って、立ち尽くしたままの私に、

「ちゃんと免許も持ってる」

と。またふざけたことを言って、愉しそうに笑う。