瞬きさえも忘れていた。

狡い……。


そんな穏やかな笑顔を見せられたら、不満も怒りも全部、どこかへ吹き飛んでしまうじゃない。



岩本さん、狡い。



「甲本、百発百中ならず。ざまぁみろだな」

嬉しそうにそう言う岩本さんの笑顔は、まるで子どもみたいに無邪気で。そんな彼を、不思議な気持ちでぼんやり眺めていた。



「そろそろ行きますか」

不意に真顔になって、岩本さんがじっと私を見詰める。



「どこへ?」


「家まで送る」


まるでそれが当然かのように平然として言い、岩本さんはおもむろに私の手を取った。そうして、コンビニ出入口へ向かって歩き出す。



「結構です。一人で帰れますから」


「『一人で帰れる』ことぐらいわかってる」



ほんと岩本さんって、『ああ言えばこう言う』だ。そんな風に言われたら、何も言い返せないじゃない。悔しい。