瞬きさえも忘れていた。

「放してください」

振り返ってキッと睨み付けながら、それでも出来るだけ冷静さを保って言ったつもり。


けれど、甲本さんの顔から一瞬にして笑顔が消えた。

冷ややかに目を細め、蔑むような視線を私に注ぐ。



「そっちこそふざけんなよ。梨乃ちゃんさぁ、いつも『誰でもいーから誘って』って顔してんじゃん。だからお望み通り誘ってやったんだよ。なのに何、その態度? 何が気に入らねぇの?」


「そんなこと思ったこともないです。勝手に決めつけないで!」

掴まれた腕を力いっぱい引いて、甲本さんの手を振り払った。



「へぇ……そうなんだぁ。でも現場のヤツはみんなそう思ってっけど? 誤解させれるような態度をとった梨乃ちゃんが悪いよね? その気になっちゃった俺、かわいそー」


言いながら、芝居がかった泣き顔を作って見せ、けれどすぐニッと不敵な笑みを浮かべた。