瞬きさえも忘れていた。

慌てて岩本さんから逃げるように顔を逸らして、前へ向き直った。


「答えたくないです」

原因不明の苛立ちに悶々としながら、荒っぽく返した。



「あっそ」

岩本さんはどうでも良さそうに低く呟いて、けれどまたすぐに口を開く。


「俺のこと避けてる?」


「気付いてるなら、わざわざ聞く必要ないですよね?」


「やっぱ避けてんだ。なんで?」


「『なんで?』って……。

嫌いだからです」



でっかい嘘を吐きました。



「ああ、それで」

岩本さんは納得したようにボソリとこぼした。



私にあんな酷いことを言っておいて、それなのに『嫌われる』という発想はなかったらしい。どんだけ鈍感さんだよ、と呆れた。


まあでも『嫌い』っていうのは嘘だけど。